【はじめに】
夏本番になると、厨房はまさに“灼熱地獄”です。火を扱い、水を使い、換気を行う厨房内は、体感温度が40℃を超えることも珍しくありません。
この環境下で働くスタッフの安全と快適性を確保することは、企業にとっての労務リスク管理であり、衛生面や業務効率を維持するうえでも欠かせない取り組みです。
今回は、厨房内で実践できる「夏の暑さ対策」をご紹介します。
【厨房が“危険エリア”になる理由】
厨房特有の構造や作業内容が、夏場の環境をさらに過酷なものにしています。
厨房が暑くなる主な要因:
• ガスコンロ・オーブン・スチコンなど熱源が集中
• 換気扇による強制排気で冷気が逃げやすい
• 調理中の蒸気・熱水・油煙による体感温度の上昇
• 狭いスペースでの複数人作業による熱のこもり
【厨房内の暑さ対策|5つの実践ポイント】
① 冷却機器を上手に使う
• スポットクーラーや業務用送風機をキッチン内に配置し、熱のこもりやすいエリアに風を送る
• 冷風ベストや冷感インナーなど、作業着に工夫を取り入れる
• 換気扇の排気バランスを見直し、空調との連携を最適化
② 作業工程と火の使い方を見直す
• 高温調理機器の使用タイミングを作業時間帯で分散
• ガスコンロよりもIH調理器やスチームコンベクションの活用で発熱を抑制
• 同時調理で火元が集中しないよう工程表を再設計
③ こまめな水分補給と休憩ルールの明文化
• 厨房入口やバックヤードに冷たい麦茶・スポーツドリンクなどを常備
• 30〜60分ごとに短時間の水分タイムを設け、無理な連続作業を防ぐ
• 休憩室には扇風機+塩分補給用のお菓子や梅干しなどを常備
④ 厨房内の衣類・シューズの見直し
• 作業着は速乾性・通気性の高い素材を採用
• 通気口付きの調理帽や、吸汗性の高いインナーキャップを使用
• シューズは通気性+滑りにくさの両立を意識
⑤ 熱中症リスクの「見える化」とスタッフ教育
• 温湿度計を設置し、目安を見える化(例:30℃以上は水分タイム)
• 朝礼や日報で暑さ指数(WBGT)を共有し、注意喚起
• 新人スタッフにも熱中症の兆候(ふらつき・頭痛・発汗異常など)を教育
【経営者・管理者が意識すべきポイント】
厨房スタッフの体調不良や離職を防ぐためには、ハード面とソフト面の両立が重要です。
暑さによる判断力低下や集中力の低下は、調理ミス・ケガ・衛生事故につながるリスクになります。
「厨房が暑いのは当たり前」ではなく、“改善できる労働環境”として継続的な対策が必要です。
【まとめ】
厨房の暑さ対策は、スタッフの健康管理であると同時に、企業の責任でもあります。
働く人が安心して長く働ける環境こそが、サービスの質・味の安定・顧客満足につながります。
今年の夏も、「厨房の熱中症ゼロ」を目指して、現場と一緒に取り組みを進めていきましょう。